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| 「誰よりも、そばにいる」 (3)妹のこと 赤沢(あかざわ)奏大には、妹がいるはずだった。 奏大はもう憶えていないが、3歳のときに母が流産し、それ以来、写真のない仏壇と、生まれる前から用意されていた小さな靴下やお人形などが、部屋の一部を占領していた。 一人っ子として育てられた奏大だが、時折、妹がいるという錯覚に囚われた。部屋の中にある女の子のおもちゃもそうだが、両親が手を合わせる仏壇の中に、彼の妹は存在した。 奏大も真似をして、仏壇を拝んだ。 逢いたかったよ。 生まれてきてくれればよかったのに。 何度もそんなふうに心の中で声をかけた。 無性に近所の女の子に目が行くようになったのは、小学生のころからだった。 入園前後の小さい子を見ると、自分の妹が生まれ代わって、そこにいるのではないかと思った。 小さい女の子ばかりと遊んでいると、一人の幼稚園児が奏大を不思議そうな目で見ていた。 「友達がいないの?」 その女の子は、内心きっと奏大を憐れんでいたに違いない。 「ちがうよ」 奏大が反論しても、その子は考え方を変えなかったようで、たびたび道で会っては奏大のことを観察するように見ていた。愛くるしい顔のその子の目には戸惑いのような、興味のような感情が見え隠れしていた。 そこで、奏大は小さい子たちと遊ぶのをやめた。かわいいと思う気持ちはあったが、彼女たちは決して奏大の妹ではないと気付いたからでもあった。親も奏大が小さい女の子と遊ぶのを、心配していたようだ。 小学校の友達と遊ぼう、そう思っていた。 その矢先に、奏大を観察していた幼稚園児を見つけた。いつも奏大が小さい子たちと遊んでいた場所にうつむいてひざを抱え、座り込んでいた。 奏大は、なんとなくひきつけられて、その子の前に立った。 その子はゆっくりと顔をあげ、奏大の目を見つめた。 奏大はその子の、ひどく不安そうな表情を見ると、放ってはおけなくなった。 「どうしたの?」 「お兄ちゃんが帰ってこないの」 奏大はその子の言葉の意味がわからなかった。 「大丈夫だよ。きっと帰ってくるよ」 そう言って、その子の頭を撫でてやった。 1つ年下のその子と仲良くなり、一緒にいることが多くなった。 いつもどこか、面倒を見なければという義務感と、それに伴う自己満足に酔っていた面もあった。けれど、それは最初のうちだけだった。 一緒にいることが楽しかった。 それだけの気持ちで、その子を大切に思った。 今日の雨で、風邪をひかなかったか、心配だった。 強く見せかけていても、結構体はひ弱なやつだから。 後で、彼女がバイトするコンビニに、様子を見に行こう。 |
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