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| 「誰よりも、そばにいる」 (6)気になる 「ごめんね、驚いたろ」 柴崎優介(しばざき・ゆうすけ)は、申し訳なさそうな目をして逢理を見つめた。 逢理は西日で茶色に透けた瞳で、眩しそうに柴崎を見てから、少しうつむいた。 逢理は自転車を押し、公園の外周を、柴崎と並んで歩いていた。 「どうして私のことを?」 逢理は、横にいる柴崎の方は見ずに、尋ねた。 柴崎もまっすぐに前を向いたまま、ゆっくり話し始めた。 「俺、4人兄弟の末っ子なんだ。で、一番上の兄貴が、瀬戸真彦さんと同級で……」 「お兄ちゃんと?」 逢理は驚いて足を止めた。 「うん。部活とかバイトとか一緒だったらしいよ」 「そう……」 「好きなコも一緒だったらしくて、それでも真彦さん、めっちゃいい人で、俺の兄貴とそのコを取り持とうとしてくれたり……」 お兄ちゃんに好きな人がいたんだ。そう思うと、逢理は胸がきゅうっと痛くなった。 「もっともっと、話はあるんだけど、なんか、俺アガッてるなー」 そう言うと、柴崎は頭を掻いた。 逢理は柴崎の照れた様子を見て、少し笑顔になった。夕日のせいか、柴崎は顔が赤い。 「ありがと。教えてくれて」 「うん。いつかちゃんと話がしたいって気になってたんだ。今日はごめんね、突然で」 「いいよー。うれしかった」 逢理が笑いかけると、柴崎も笑った。 「兄貴が少し真彦さんの写真持ってるんだ。見る?」 「うん! 見る!」 逢理は思わずその場でつま先立ちした。 「わかった。じゃあ、また今度もって来るよ。えっと、どうやって連絡したらいいかな……」 「それじゃあ……」 奏大は急に姿を消した逢理のことが気になっていた。彼は二度もエラーをして、皆に大笑いされていた。 セカンドの棚田がタイムを取って、奏大のいる三塁付近に駆け寄ってきた。 「おい、応援がないとチョーシ出ねえのかぁ?」 「そーゆーんじゃねーよ」 奏大はしゅんとしてうなだれた。 「おまえ、高校じゃあレギュラーだったんだろ? 次エラーしたら、マジでキャプテンの座、下ろすよ」 「そんなことゆーなよ! 楽しくやろーよ、ね」 奏大は苦笑いして棚田を見た。 しかし棚田はニヤリともせず、真顔でいい放った。 「そういえば、お前のカノジョ、さっき公園出てった時、男と一緒だったぞ」 「え!」 奏大は目を大きく開けて、棚田に掴みかかった。 「いいか、棚田。カノジョじゃないんだ。だけど、男って、なんだ?」 その迫力に圧倒されながら、棚田は言った。 「男って、男だよ。てーか、カノジョじゃねーなら、どーでもいいはずじゃね?」 「どーでもよくねーよ!」 大きな声がグランドに響き渡った。 チーム全員、敵も味方も、皆、奏大を見た。 奏大はグラブを脱いで、棚田に渡した。 「悪いけど、俺、今日帰るわ」 「ええ?!」 棚田は驚いて、呆然と奏大の顔を見つめた。 「ゲーム中に何言ってんの。お前抜けると、ゲームできねぇじゃん」 「あそこで砂遊びしてる、チビにでも入ってもらえ。じゃーな」 「おいおい!!」 奏大はキャッチャーの後ろあたりに作られた、ベンチの代わりの荷物置き場に行くと、自分の荷物を担いでそそくさと公園を後にした。 その場に残されたチームのメンバーたちは、互いに顔を見合わせていた。 奏大は公園の外に止めておいた自転車に乗って、全速力で走り出した。 |
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